『錆』とクレエルが挿みました。
『さうだ。それを錆と云ふのだ。』
『あの大きな釘ね、あすこの風鈴草が這ひ上つてゐる、庭の垣の鉄の針金をとめた、あれも赤い皮がかぶつてゐますよ』とジユウルが注意しました。そしてエミルが附加へました。
『僕が地面で見つけた古いナイフもやつぱりその赤い皮がかぶつてゐたよ。』
『その大きい釘や古いナイフはもう長い間湿つた空気に曝されたために、錆ですつかり皮が出来たんだよ。湿つた空気に曝しておくと、鉄は腐る。それは、金属と其の金属に出来る目に見えない或物とが組み合つて、さうなるのだ。錆が出ると、鉄はもう吾々に非常に便利に出来てゐる其の性質を無くして了ふのだ。ちよつと見ると赤土か黄土のやうだが、別だん注意して見ないでもその中に金属がある事は分る。』
『僕にはそれはよく分りますよ』ジユウルが云ひました。『僕は僕の大事な仕事にして、必ず空気や湿気で出来て来る鉄の錆を取る事にしよう。』
『他の沢山の金属も鉄のやうに、錆びる。云ひ換へれば、金属は、湿つた空気に接すると、土のやうなもので覆はれてしまふのだ。錆の色は、其の金属によつていろ/\と違ふ。鉄の錆は黄色か赤、銅のは緑、鉛と亜鉛は白だ。』

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